まず、御社の事業内容と部署の主な担当業務について教えてください。
藤野:
神戸製鋼という社名から鉄鋼の会社というイメージを持たれることが多いのですが、それ以外にも多様な事業を展開しています。鉄鋼、アルミ、溶接といった素材系に加えて、機械、エンジニアリング、建設機械といった機械系、さらには電力事業を手がける総合力のある会社です。
私が所属している広報・広告宣伝グループでは、KOBELCOブランドへの理解度向上やグループ社員のエンゲージメント向上を目的に、サステナビリティ経営施策を軸とした情報発信を社内外に向けて積極的に行っています。その一環として、CMを中心とした広告宣伝の展開やウェブサイトのリニューアルなどの施策を実施しています。
柳原:
私が所属しているコベルコビジネスパートナーズ株式会社は、KOBELCOグループのシェアードサービスとしてグループ全般に必要な業務を集約しており、その一つとして神戸製鋼所のコーポレートサイトの運用を支援しています。
神戸製鋼所側に方向性を判断いただきながら、日々の更新作業や改善提案を行っています。
コーポレートサイトの運用方針や運用体制について教えてください。
柳原:
事業が多岐にわたる中で、タイムリーに必要な情報をステークホルダーの皆様にお届けすることが最も重要な方針です。実際の情報は各事業部門や本社担当部署等が持っているため、広報・広告宣伝グループと私たちが連携しながら発信しています。
リニューアル以前は日々の情報公開に追われ、機能面の改善には十分手が回っていない状況でした。今回のリニューアルを機に運用体制も見直し、四半期に1回、制作会社も交えた改善会議を行う運用サイクルをスタートしました。
昨年、十数年ぶりにリニューアルされたとのことですが、どのような目的や目標があったのでしょうか。
藤野:
当社は2025年9月に創業120周年を迎え、それに関連して大阪・関西万博への協賛・参画や120周年記念アニメーション「あしたのありか」の制作、スポーツ活動の支援など、さまざまな取り組みを展開することが決まっていました。当社は2023~2027年度を「ブランディング強化期間」と位置づけており、IR、SR、サステナビリティなど多様な活動を通じてブランド力の向上に取り組んでいます。
その中で、ウェブサイトを目にしていただく機会も増えると想定した際、創業120周年プロジェクトをはじめとするさまざまな活動を行っていても、サイトを訪れてくださった方に対して活動の背景や当社の考え方、事業を分かりやすく伝えられなければ、機会損失につながりかねないと考えました。そこでフルリニューアルに踏み切ったのです。特に、単なるデザイン刷新ではなく、情報設計から見直し、当社グループの目指す方向性や事業を分かりやすく伝えることを重視しました。
柳原:
リニューアルにあたっては、古い設計で使い勝手が悪くなっていたという問題がありました。そこで、今回のユーザビリティ診断と近い「ヒューリスティック分析」という手法で、制作会社に使い勝手を点数化して評価していただきました。
藤野:
当初は動画などを多用した派手なサイトを作ることも検討していましたが、当社の取り組みや強みをきちんと伝えることを重視し、サイトの使いやすさや品質といったUX(ユーザー体験)の基礎を重視する方針に切り替えました。
リニューアルを進める上で、ご苦労されたポイントはありますか。
柳原:
2023年の秋頃に動き始めたのですが、前回のリニューアル経験者は誰一人残っておらず、「何から検討すべきか」という勉強から始める必要がありました。そして明らかになったのは、サイト全体で約5000ページもあるという現実でした。
担当者も代わっていく中で、引き継ぎがされていないところも多く、自分たちがそのページを持っていることをリニューアルのタイミングまで認識していなかった部署もありました。まずは、重複しているものや必要ないページを削っていく作業から始めました。
藤野:
最終的にページを40%ほど削減しました。それでもかなりの量が残りましたが、身軽な状態でデザインを考え始めることができました。
柳原:
制作会社は表示速度を重要なポイントとして強く意識しており、画像の形式を変えるなどして軽量化に取り組みました。こうした取り組みが、今回ユーザビリティランキングで高く評価いただいた「A.アクセス性」の評価にもつながっているのだと思っています。
藤野:
もう一つ大きな課題がありました。当社は非常に多様な事業を展開しているため、見せたい内容や見せ方、売り方も事業によって異なっていました。各事業部門の話を聞きながらどのようにして1つのサイトに反映させるかに苦労しました。制作会社からは「神戸製鋼さんは事業領域が広い分、1社で6~7社分を見ている感覚だ」と言われるほどでした。最終的にはベースとなるデザインを固めることで全体の一貫性を整えていきました。
柳原:
コーポレートサイトとして、デザインや情報の粒度をある程度統一しないと見づらくなってしまいます。各事業部門の要望をすべて反映できるわけではないため、"どのような落としどころにするか"についての調整が大変でした。
コーポレートサイトとは別に、製品独自のスペシャルサイトを展開している事業もいくつかありました。コーポレートサイトでは私たちの方針に添ってもらい、その一方で表現の自由度が必要な部分については、各スペシャルサイト側で対応してもらうといった役割の切り分けも行いました。
今後の課題についてお聞かせください。
柳原:
今回はユーザビリティの改善という制作会社や私たちが主導しやすい領域を中心に取り組みましたが、ウェブサイトの役割を考えると求められている情報を届けられているかが重要になります。そのためには、コンテンツの中身を各部と連携して充実させていく必要があります。今後は社内でサイト改善に取り組む仲間を増やし、より多くの人を巻き込んで改善を進めていきたいと考えています。
藤野:
今回のリニューアルによって、各部署が自由に運用していたことが、課題に繋がっていたという理解を得られたのは大きな収穫でした。一方で、これまで十分な統制ができていなかった点は反省点でもあります。今後は、今回のリニューアルをきっかけに、ガバナンスを意識した運用を進めていきたいと考えています。
また、ウェブサイトは営業担当が製品を紹介する際に活用するほか、機関投資家やIR関連の株主など、さまざまなステークホルダーの皆様も閲覧する重要な媒体です。期待に応え続けられるよう、これからも継続的に改善に取り組んでいく必要があると考えています。


