御社の事業内容とDX推進体制について教えてください。
大木:
東急グループは、交通事業・不動産事業・生活サービス事業・ホテルリゾート事業を事業分野としています。東急はその中核企業として、「まちづくり」を事業の根幹に置きつつ、お客さまの生活に密着した多様な領域で事業を展開しております。交通事業では、東急電鉄が9路線を運行しているほか、クルーズトレイン「THE ROYAL EXPRESS」の運行や、空港運営事業も展開しています。また、不動産事業においては渋谷などの大型開発事業を推進するとともに、環境に優しい街づくりと、沿線活性化に努め、次世代へつながるまちづくりを推進しています。生活サービス事業では、日常生活のさまざまな場面で貯めて使えるポイントサービス「TOKYU POINT」や一般家庭向けサービス「東急でんき&ガス」を提供する東急パワーサプライなど、交通事業・不動産事業とのシナジー効果を生み出す様々なサービスを展開しています。
お客さまとのデジタル接点の改善・拡充が非常に重視される時代となり、当社ではデジタルプラットフォームという組織の中にURBAN HACKSというデジタルサービスの内製開発組織を立ち上げました。「テクノロジーで街を豊かに」というビジョンのもと、様々なプロダクトを社内で開発しているのが、当社のDXにおける大きな特長です。
2025年のWebサイトリニューアルに携わられた部署と、それぞれのご担当領域についてお聞かせください。
大木:
URBAN HACKSが中心となり、東急の広報グループ、東急電鉄の広報・マーケティング部とともにプロジェクト体制を組みました。
髙橋:
広報・マーケティング部は、広報CS課、CX・マーケティング課、沿線企画課の3つの課で構成されており、安全・安心、顧客満足、信頼される情報発信を一体的に推進しています。今回リニューアルしたWebサイトは、企業姿勢や沿線価値、お客さまからのお声をサービス改善に活かす取り組み、有事の際のリスクマネジメントなどを発信する媒体として位置付けており、安全・安定輸送、沿線価値向上を支える情報基盤として運用しております。
石井:
URBAN HACKSは2021年7月に新たに設立された組織となります。お客さまとのデジタル接点を東急・東急電鉄として強化していくという目的で立ち上げられました。メンバーの主要な構成は、実際に開発やデザインができるエンジニア・デザイナーです。加えて、私たちのような企画を担当するプロダクトマネージャーや事業開発の職種もおり、プロジェクトごとにチームを組んで、企画から開発、デザインまで一気通貫で担当しています。
Webサイトの運用は具体的にどのような体制で行っているのでしょうか?
北浦:
Webサイトは、会社概要などを掲載する「コーポレート」領域、東急電鉄の情報を掲載する「鉄道」領域、街の情報を掲載する「メディア」領域の3つに大きく領域が分けられています。領域ごとにチームを編成し、3チーム体制で並行してサイト運用にあたっています。
また、サイト内には沿線のイベント情報や記事が数多く掲載されていますが、これらは私たちが全て制作・管理しているわけではなく、各グループ会社の担当者が記事やイベント情報を制作して入稿し、それを当サイトに表示するという仕組みを取っています。
サイト運用における調整の難しさはありますか?
髙橋:
東急電鉄の中にも、工務、電気、車両、運輸など様々な部門があります。各部門の意見をまとめた上で、URBAN HACKSと調整して連携していくという流れになるため、URBAN HACKSとの連携はもちろん、各部門との連携にも、やや難しさを感じました。
北浦:
メディア領域については、東急電鉄だけでなく多くのグループ会社、また各地域の自治体や商店会との連携も必要になります。情報を集めていく部分の体制構築には、難しさを感じています。
Webサイトの目的や目標、成果指標について教えてください。
北浦:
まず、リニューアルの背景としては、様々な課題感がありました。東急と東急電鉄それぞれの情報をいかに分かりやすく伝えられるサイトにするか。東急㈱グループ内の情報をどう集約して伝えていくか。こうした課題を踏まえた上で、プロジェクトの初期段階にワークショップを複数回設け、どのようなサイトにしていきたいかを議論しました。
その結果、「東急の魅力を届け、新しいまちや情報との出会いを楽しむためのプラットフォームとなる」というプロダクトビジョンを策定しました。従来のWebサイトは、IR情報や採用情報、会社としての取り組みなど、会社情報を掲載するサイトでした。それを沿線にお住まいのお客さま向けのサイトに作り変えていこうというのが、今回の大きな方針です。
成果指標については、各領域で異なる設定をしています。コーポレート領域は、正しく情報を伝えていくことが最も大切です。鉄道領域については、電車に乗るというリアルな体験と繋げて分かりやすく情報を伝えていくことを重視しているため、お客さまの満足度を成果目標の一つとして捉えています。メディア領域については、新しく立ち上げた領域ですので、まずは沢山の方に見ていただくことがスタートです。現在は記事のPV数やUU数を成果目標として設定しています。
そのような思いで取り組まれたリニューアルでは、具体的にどのような改善をしましたか。
石井:
メディア部分は完全に新規のコンテンツですが、東急電鉄の「電車に乗る」情報に関しては、従来あった情報を活かしつつ、カテゴライズやデザインの刷新、アクセシビリティの改善を行いました。より多くの方に正確な情報を届けることを重視しています。アクセシビリティの改善については、リニューアルを一つの機会と捉えて、3チーム共通の重要項目として位置づけました。そのうえでWCAG準拠の基準を策定し、改善に取り組みました。
北浦:
アクセスの大部分がスマートフォンからであることを踏まえて、スマートフォンユーザーの利便性向上にも注力しました。
リニューアルの成果を感じられるような出来事はありましたか。
北浦:
新たに立ち上げたメディア領域については、毎月ユーザー数が伸びてきており、現在は順調に成長が見られます。鉄道領域とコーポレート領域については、リニューアル後の数ヶ月間、災害や事故など、お客さまへの影響が大きい事象が発生する中でも、サイトに訪れてくださったお客さまに情報を正しく伝え続けられていることが、私たちの役割を安定して果たし続けられている証と捉えています。また、アクセシビリティの規格適合性検査を行いました。結果として、WCAGのA基準ではほとんどのページで99%、AA基準ではほとんどのページで90%台を達成できています。
最後に、今後の展望についてお聞かせください。
北浦:
今般のWebサイトリニューアルの最大の特長としては、制作会社を介さず内製で進めた点と考えています。2025年6月7日のリニューアル以降、毎週少しずつ改善・リリースを行っています。このスピード感は、内製ならではの大きな強みと考えます。この体制は今後も継続していきます。
また、今後の展望として、鉄道領域では移動情報を正しく伝えることを継続しつつ、次のステップは「いかに移動を楽しんでいただけるか」を、私たちのサイトを通じてお客さまに提案していくことが大きな目標です。街の情報やイベント情報と、移動をどう結びつけて、分かりやすく、楽しく伝えていけるのか。これを次のアクションとして検討しています。将来的には沿線に住んでくださる方を増やし、沿線の街を好きになってもらうことがゴールです。実際にどういう道のりを辿れば居住につながるのかを探りながら、まずは目の前のお客さまが移動してその街に訪れてくださるという結果につなげていきたいと考えています。
髙橋:
公式Webサイトの存在はお客さまとの接点として最も重要なポイントとなります。お客さまが知りたい情報をスムーズに獲得したり、お困りごとを自己解決していただいたりという観点を重視し、当該部分のさらなる強化を図っていきたいと考えます。


